株式会社伊藤商店 様|経営者・人事インタビュー

数ある採用支援会社の中から、なぜR4が選ばれるのか。その理由を、企業の人事・採用ご担当者様へのインタビューを通じて明らかにしていくシリーズです。今回のゲストは、愛知県東海市を拠点に生コンクリートの製造・販売等を手掛ける、株式会社伊藤商店の代表取締役社長・伊藤 大司(たいし)様。3代目候補として戻った生家で、経営者としての想いや苦悩・喜びに寄り添ってくれたのは、R4が支援する「理念採用」で出会った大切な仲間たちだったそうです。

インタビュアー/R4サービスサイト編集部 専属ライター

企業について

法人名:株式会社伊藤商店
本社:愛知県東海市
従業員数:35名 (2023年1月 時点/グループ全体)
公式Webサイト:http://www.ito-syouten.com

“理念採用” で出会えた仲間が、会社を変えてくれました

先代である父との約束は「3年で戻れ」

――本日は宜しくお願いします。まず、伊藤社長のご経歴についてお伺いできますでしょうか。

はい。大学時代の専攻は経営学で、卒業後は業界大手と言われる生コン商社へ就職しました。関東エリアの支店に配属され、そこで約3年間、商品知識・現場知識と共に営業のイロハを叩き込まれています。2010年に伊藤商店へ入社し、社長へ就任したのが2020年で、間もなく丸3年になります。

――学卒後のご就職先は、家業を継がれる前提で選ばれた…という理解で宜しいですか?

そうですね、先代である父の意向が強いです。「大企業の厳しい環境で学んで来い。但し3年で伊藤商店に戻れ」と言われていましたから。

――家業を継がれるというご覚悟は、いつ頃からお持ちだったんでしょう?

正直なところ、覚悟という程のものはありませんでした。生まれた家がたまたま商売をしていて、子どもの頃から祖父や父が経営者だったので、「自分もいつかは同じ立場になるのかな…」と、ぼんやり思っていたくらいです。ただ、当時会社で働いていた皆さんは私を “後継ぎ” と思って接してくださっていましたから、そういった面からの影響も受けていたとは思います。

――迷いですとか、「やりたくないな…」というお気持ちはありませんでしたか?

後ろ向きな気持ちはありませんでしたが、お世話になった商社を離れる時は寂しかったですね。3年目なんて、営業として花盛りでしょう。さあ、ここからだという時に退職の申し出をしなければいけなかったもので…。営業として育ててくださった上司から「せめてあと2年、一緒にやってくれないか」と声を掛けて頂いた時は、胸が痛みました。勤め先への愛着もありましたから、先代にも「もう少し今の会社で頑張りたい」と伝えてみたんですが、結局は覆せませんでした。

でも今にして思えば、先代の判断は正しかったと感じます。当時の勤め先は大手商社でしたが、伊藤商店は中小メーカー。風土も価値判断の基準も大きく違います。それに商社時代はいちプレイヤーでしたが、伊藤商店に戻れば多かれ少なかれ、経営者としての視点が求められるのは明白でした。収まるべき場所が決まっているのであれば、その環境に慣れるのは、早いに越したことはありませんよね。

戻った先の家業には、 “喜び” が足りなかった

――伊藤商店へのご入社から社長就任までが、約10年。これは元々、そのようなスケジュールが敷かれていたんでしょうか?

そういったものは全く…。実は先代からは一度も、「会社を継いでほしい」とは明確に言われていないんですよ。でも、事業承継ってそういうものかもしれないと、今の立場になって思いました。バトンをパスする側からも受け取る側からも、なかなか切り出せないものなんです。私が「社長をやります」と自ら申し入れたのも、経営面でアドバイスを頂戴している、窪田先生 (※) に背中を押されてのことでしたから。

(※ 理念経営協会の理事長を務める経営コンサルタント・窪田貞三氏。 http://rinen-pma.jp/about/

――R4主催のセミナーでも度々ご登壇くださっている、『窪田経営塾』 主宰の先生ですね。

はい。当時はまだ、経営者への具体的な道のりが見えていた訳ではありませんでしたが、売上と利益だけを追求する経営に、自分が熱中できるイメージを持てなかったもので…。そんな時に、知人からの紹介でお会いできたのがきっかけでした。

――「売上と利益だけを追求する経営に、熱中できるイメージが無かった」というのは、何かしら原体験があってのご感覚だったんでしょうか?

そうですね。当時の私は伊藤商店で働く中で、この会社から生まれる “喜び” が少ないことを苦しく感じていたんです。

前職は商社勤務でしたから、商材である生コンが売れれば部署全員が喜んでくれました。でも、伊藤商店はメーカーです。売れたら次はそれを生産しなければいけませんし、生産力やマンパワーには限界があります。会社を維持するためには、まず売らなければいけない。しかし売れすぎれば製造スケジュールが逼迫し、従業員にしわ寄せが行ってしまう。現場ですり減り、くたくたになりながら帰っていく仲間の姿を見ながら、気持ちの面で追い詰められつつあったんです。

そんな時に支えになったのが、当時実行委員として参加していた地域貢献団体での取り組みでした。そこでは経営者や実業家が、身銭を切って地元の子どもたちのためにイベントを主催していました。自分たちが考えたプログラムに参加して、喜んでくださるお子さんや親御さんの姿が、私にとってはこれ以上ないエネルギーになっていました。仕事以上に夢中になれる自分が、あの場には居たんですよね。

――それが伊藤社長にとっての「熱中できる」ことだったんですね。

おっしゃる通りです。会社の経営にも、こうした地域貢献の視点を取り入れられないものかと、心のどこかで思っていたんです。

窪田先生に背中を押され、「自分が継ぎます」

――地域貢献のエッセンスを経営に取り入れるという考え方は、2010年当時、一般的なものだったんでしょうか?

参考にできる情報は、ほとんどありませんでした。経営書の類は相当読みましたし、経営者向けのセミナーにも多数参加しましたが、そういった話題はなかなか出てこなくて、どうすれば儲かるかという話ばかりでしたね。同業者の仲間に相談しても、「君は甘いことを言っているな」と呆れられてしまって。

それでも私にとっては、地域貢献活動に心血を注いでいらっしゃる企業様の姿が眩しかったんです。経営者を追ったドキュメンタリー番組を見ていても、地域貢献活動から事業を展開され、多くの人を喜ばせている企業様にばかり目が行っていました。そんなタイミングで伺ったのが窪田先生のお話だったんですよ。

――「利他の心」を大切にする経営を、体現されている先生ですよね。

そうです。講演を聞いた時は、私の考えが見透かされているのかと思うほどの衝撃でした。「地域や社会に貢献する経営は可能である」「実際に自分もしてきたし、自分が教えた若い経営者も、そういった “利他の経営” を実現している」とおっしゃる姿を見て、この方の下で学びたいと直感しました。探し続けていたものがようやく見つかった!と思いましたね。

――そんな経緯がおありだったんですね。

事業承継って、本当に難しいです。親から子へ会社を渡される皆さんは、どうやってそのタイミングを作っているんだろうかと、不思議に思うほどです。

私の場合は先生に背中を押され、ようやく動くことができました。「やりたい経営があるなら、自分から言った方がいいよ」と背中を押して頂き、まさにこの会議室で先代へ、「自分が会社を継ぎます」と申し出たことを覚えています。

これは社長という立場になって感じたことですが、先代はあの頃、私が自ら社長になると言い出すのを待っていたのかもしれません。会社を任せるという決断は決して簡単ではありませんし、息子である私と自身とでは、会社に対する考え方が大きく違うことも、同じ場所で働いていて感じていたことでしょう。そんな中でも私が自発的に動き、そして、頼れる経営パートナーも得たと知ったからこそ、社長の座を渡そうと思ってくれたのではないでしょうか。

朝6時から現場清掃。言葉でダメなら、態度で伝える

――社長へ就任されて、率直にいかがでしたか?

つらかったですね…。分かっていたことではありますが、当時の伊藤商店は、自分が目指す会社組織とは真逆のものでした。喜びを生み出す以前に、コミュニケーションもほとんど無いような状態で、現場の従業員の大半が「自分さえ良ければそれでいい」という考えを持っているようでした。

就任初日に全従業員を集めて、経営理念に据えた『土台となる』という言葉について話したんです。生コンの製造・販売は、地域に建つ住宅の土台となる仕事です。それに掛けて、住宅の土台を造る(建材を製造する)仕事を通じ、地域社会と従業員の生活の土台(拠り所)となるのだと――。伝わらないことは覚悟していましたが、案の定、みんな不思議そうにしていましたね。そもそも、ひとところに集まって誰かの話を聞くという文化が無い会社でしたから、「半日も作業を止めてやることじゃないだろう」なんて声も出たくらいです。

――大変な船出だったんですね…。

従業員同士もですが、社長と従業員とのコミュニケーションも希薄な組織でしたからね。それまで現場に顔も出さなかったような「社長」が、いきなり話し掛けてくるようになった訳ですから、戸惑う部分もあったと思います。

就任あいさつの場では、従業員への想いも伝えたんです。地域貢献活動で多くの人に喜ばれた話も織り交ぜながら、「全員で手を取り合って、伊藤商店を “人生を好転させられる職場” へ変えていきたい」と話してみたんですが、それもなかなか響かなくて…。でも、働く側からしたらそうですよね。日々汗を流して頑張っているんだから、貢献する先は地域じゃなく、俺たちだろうと思われても仕方ない。冷たい視線を感じながら、まずは自分が信頼されなければいけないと感じました。

――信頼を勝ち取るために、どんな行動を取られたんでしょう?

言葉で伝わらないなら、態度で示すしかないですよね。朝6時に来て、掃除して、全員に声を掛けて回って、営業活動して、品質チェックして、調子の悪い設備があれば直して…。

――雑用までこなされていたんですね…。

惨めに思う瞬間もありました。一輪車でひとり道具を運んでいても、誰も助けてくれないような状況だったんです。正直、「この会社を守ることに、どれだけの意義があるんだろう」と考え込む日もありましたよ。経営者は孤独だとよく言いますが、思っていたのと違う孤独だったなと…。

――それが今や、こんなに明るくて、互いに助け合える会社になられたんですね。

ありがとうございます。3年間、本当にいろんなことがありましたが、ようやく自分が思い描いていた姿に近付きつつあります。

信頼できる仲間と見つけた “女性採用” という目標

――会社の風土を変えていくにあたり、インパクトの大きかったできごとは、どんなものでしたか?

信頼できる仲間との出会いだと思います。社長として孤独を感じていた時、自分と一緒にこの難局を乗り越えてくれる仲間が欲しいと思い、役職候補者の募集を始めました。それで入社してくれたのが今の「主任(上記写真 左から2番目)」です。

主任は私より年上の男性ですが、価値観や感性に共感できる存在です。「この人が味方でいてくれたら心強いだろう」と直感しました。今でも毎日、二人で色々な相談をします。現場では私の想いを従業員へ伝えてくれていますし、頼もしい限りです。

――主任様、明るくてひょうきんな方ですね。先程のお写真撮影の際も…。

そうでしょう?アフロのカツラなんて、どうして常備しているんでしょうね。普段はドライバーをしながら、ああやって周りを和ませてくれるんですよ。

――心強いお仲間ですね。伊藤商店様の採用といえば、女性ドライバーさんの活躍でも知られていますが、女性の登用はどういったきっかけで注力されるようになったんでしょう?

以前、ドライバーさんの約5割が女性という、珍しい同業他社様を見学させて頂いたんです。その会社がとても素敵だったんですよね。社内コミュニケーションも活発ですし、手が空いた人は別部門の仲間を自然と手伝いに行かれますし。みんなで手を取り合って事業を回していく、私が憧れる組織そのものでした。

生コン業界はまだまだ、男性的な価値基準が色濃く残る世界だと感じています。職人気質と表現すれば聞こえはいいかもしれませんが、チームワークやしなやかさに欠ける面も少なくありません。そんな中で、その会社では助け合う風土が醸成されていました。社内もにぎやかだったんですよね。託児スペースでお子さんが遊んでいるすぐ近くで、時短勤務のお母さんスタッフが、男性従業員に発破を掛けていたりして。

――カッコいいお母さんですね!

女性の胆力みたいな部分、特にお子さんがいらっしゃる方の底力って、本当にすごいなと思いました。子どもという守るべき存在を持っていると、女性は一層、強くなれるんですかね。私も妻には頭が上がりませんし…。

視察から帰ってきて主任にそんな話をしたら、「そういえば、うちにはどうして女性ドライバーが居ないんですか? “働くお母さん” が社内に居れば、いいお手本になってくれそうですよね」と言われたんです。自分と同じことを考えてくれる仲間が居たと思うと嬉しく感じましたし、同時に、これは具体的な行動に移さなければと、使命感のようなものも芽生えました。

「会社がいい方向に進もうとしている時なんです」

――そうして、女性ドライバーの採用活動が始まったんですね。

はい。入社時点ではアルバイトもしくはパート雇用ですが、お互いの希望が合えば、3か月後を目途に時短正社員へ登用する…というポジションを作りました。勤務は朝9時からで、夕方は16時半か17時まで。保育園への送り出しとお迎えの両方へ間に合う時間帯に設定しましたが、状況によってはここから更に調整することも可能です。

これはジェンダーの問題に詳しい知人から、「正社員として働きたくても、保育園の預かり時間の厳しさから、それを叶えられないお母さんが多い」と聞いたためです。お母さんが子育てと両立しながら働ける場所を作ることができたら、雇用の面から地域の『土台となる』ことができると思いました。

――実際に受け入れを始めてみて、いかがでしたか?

最初は大変でした。昔気質の従業員から「これから入る新人だけ、どうして仕事が軽くなるんだ。特別扱いじゃないか」という声も届きましたが、その時も主任が間に入ってくれました。「お母さんが活躍できる会社なら、みんなが働きやすくなる。会社がいい方向に進もうとしている時なんです」と説明してくれましたし、私自身も従業員に対して、「頑張ってくれる人のことは、これまで以上に評価していく」と約束しました。

でも、一番頑張ってくれたのは、入社された “お母さん” ご本人ですよ。特に1人目の女性ドライバーさんには、環境改善に向けた意見を数多く貰いました。彼女が1人目として入社してくれたからこそ伊藤商店は、女性が活躍できる生コンの会社になったんです。

――採用サイト(※)も拝見しました。「鍵付きのロッカーを備えた女子更衣室がある」「重量品の手運び作業がないので、力に自信が無くてもできる」など、多くの女性が気にされるポイントを押さえた構成になっていましたね。

(※ ITOグループ 株式会社伊藤商店 採用サイト https://itogroup.jbplt.jp/

そうなんです。無料で立ち上げられる『エアワーク採用管理』のサイトを、R4さんに頼んでカスタムしてもらいました。内容はもちろんですが、見た目も可愛らしく仕上がっていますよね。パッケージ型のサイトなので限界はあるものの、可能な範囲で手を尽くしてもらいました。

――実際の女性ドライバーさんの笑顔も素敵ですね。お仕事を楽しんでいらっしゃることが窺えます。

彼女は元々、大型車の運転に憧れてはいたものの、お子さんがいらっしゃるということで時間的制約があり、望む仕事に就けずにいたそうです。そんな時に弊社の求人を見つけて応募してくださり、今となっては大車輪の活躍です。自分の担当外の業務もどんどん覚えて手伝ってくださいますし、それを見た男性従業員が、彼女を真似て周囲を手伝うようになったりもしているんですよ。

――それはすごい!まさに伊藤社長の狙い通り、会社が変わったんですね。

3年前、ひとりで一輪車を押していた頃からは考えられないほどの変化です。彼女のもたらしてくれた新しい風が、30年続いていた社風を変えてくれました。

本当に素晴らしい人材と出会えたと感じています。彼女、ドライビングテクニックもすごいんですよ。入社して日も浅いのに、狭い道でも難なく通っていかれるんです。あの丁寧な運転、皆さんにお見せしたいくらいです。

理念を理解した求人原稿が、会いたい人と繋いでくれた

――ここまでお話をお伺いして、伊藤社長のおっしゃる通り、採用はインパクトの大きな変化だと改めて感じました。採用難が叫ばれる時代にも、貴社がこれだけ魅力的な人材と出会えているのには、どういった理由があるとお考えですか?

断定的なことは申し上げられませんが、経営者がブレずにいることは大切だと思います。弊社の場合は『土台となる』という経営理念を定めており、経営判断や事業展開は、都度都度そこに立ち返っておこなっています。

採用の領域においても、その想いを軸とした「理念採用」を続けてきたつもりです。経営者である自分の想いを理解し、ビジョンを共有してくれる人材であるか――これが、現在の伊藤商店の採用基準です。

――なるほど。伊藤商店様の求人原稿は、社長様の想いにクローズアップしたものが多い印象でしたが、それは「理念採用」の考え方から来るものだったんですね。

おっしゃる通りです。R4さんを知ったのも、窪田先生を囲んだ勉強会で、営業担当さんとご一緒したことがきっかけでしたしね。「R4さんなら理念経営に理解があるから、理念採用の際は頼るといいよ」と紹介して頂いて、そこからのお付き合いになります。理念経営という根本的な考え方を営業担当の方と共有できているおかげで、私の意図するところをしっかり伝える求人原稿を作ってもらえていますし、実際にその原稿から、苦楽を共にできる人材と出会えています。

――営業担当は、「表現に落とし込めているのは、伊藤社長がブレない理念をもって動き続けていらっしゃるから」と話していました。経営者である伊藤社長ご自身が、本気で人と組織に向き合っているからこそ、原稿でも明確な訴求ができるし、それが結果に繋がっているのでは…とのことです。

ありがたいですね。私たちの根っこの部分をご理解くださっているからこそ、心の底から “仲間” と呼べる人との出会いに繋がっているんだと思います。採用支援って、素晴らしい仕事ですね。

――嬉しいお言葉をありがとうございます営業担当へもお伝えします。最近は新たな求人媒体や広告手法も次々と生まれていますが、採用成果に一番影響するのは「どんな媒体を使うか」ではなく、「仕事や会社を、いかに魅力的なものにするか」だと、伊藤商店様のご様子から痛感しました。

採用が年々難しくなっているという声は業界内でも耳にしますし、私自身も肌で感じています。そんな中でも、私たちの考え方や目指している未来像に共感し、働きたいと言ってくださる人が現れている訳ですから、やはり「理念経営」と「理念採用」は大きな可能性を秘めているんでしょうね。

広がっていく共感の輪。自分は間違っていなかった

――2023年4月には、大卒の新入社員さんも入社されるそうですね。初めての新卒採用者さんと共有を受けていますが、どんな方か仲間入りされるんでしょう?

非常に優秀な女子学生さんです。ご自身の成育歴から、「自分の母親のように、誇りを持って働くお母さんになりたい」「いつか我が子に、働く自分の姿を見せたい」というお気持ちが強く、弊社の女性活躍支援に向けた取り組みに共感してくださったようです。新卒採用の領域でも「理念採用」のスタンスは変えずに活動してきましたから、それが実ったのかなと感じています。

学生向けの会社説明会では、弊社の事業の特徴や、地域貢献活動についてもお話しさせて頂いています。地域で大規模な火災が起きた際には、消火支援のため保有するミキサー車を出す協定を自治体と結んでいること。コンクリート製造のときに、二酸化炭素の発生を大量に削減できる製法で、カーボンニュートラルの実現に貢献していること。子どもたちが自ら考える力を養うイベントに、NPO法人の一員として協力していることなどなど…。皆さん真剣に聞いてくださいますね。

――嬉しい反応ですね。

そうですね。中でも印象的だったのはある学生さんが、「どの会社もSDGsの話をされますが、貴社は形だけでなく、本気で取り組んでいらっしゃるんだと分かりました」と言ってくださったことですね。私たちにとってはSDGsへの貢献も、あくまで地域貢献活動から派生した “結果” として起きているもの。今の時代に伝わりやすい言葉としてSDGsという表現を選ぶことはありますが、そのいくつも前の段階に、『土台となる』という不変の経営理念があるんです。

最近は不器用ながらSNSにもチャレンジしていまして、自社の活動を、自身の言葉で発信するようにしています。伊藤商店の仕事の意義が多くの人に伝われば、従業員のお子さんも、お父さん・お母さんの仕事を誇らしく思ってくれるんじゃないかなって。「ママの運んでいる『なまこん』って、すごいものなんだね!」「パパの会社、世の中の役に立っているんだね」なんて我が子に言ってもらえたら、仕事のやりがいも一段と大きくなるんじゃないかなと思っています。

――そこまで見越してのご発信なんですね。

でも、実はこの発信が今、想像を超えた部分にまで広がりつつあるんです。私の投稿を目にされたある大学の経営学部の先生から、地域貢献に関する講演をしてほしいとお声が掛かりまして…。採用という枠を超えて、私のやりたかった経営に賛同してくださる方と、新たに繋がれるようになってきているんです。売上だけ・利益だけを考える経営をしていたら、こうした出会いも生まれなかったことでしょう。 “地域に貢献する経営” の道を選んだ自分は、間違っていなかったんだと思えました。

理念を据えればブレない。ブレずにいれば、道は拓けます

――ここまでお話をお伺いして、伊藤商店様が魅力的な会社であると理解できました。貴社のような会社づくりを目指される他企業さんへ、経営や組織づくりに関してアドバイスをされるとしたら、どんなことをお伝えされますか?

そんな、アドバイスだなんて滅相もありません。今日は上手くいったストーリーをメインにお話させて頂いただけで、実際には課題も山積みですし、私も経営者としてまだまだですから。

――そんなご謙遜を…。メディアへの露出も増えていますし、伊藤社長が歩まれてきた道を参考にしたいとお考えの経営者様は、たくさんいらっしゃると思います。

そうですか…。今、少し先の未来も見えないような時代になってしまって、どんな経営者も苦しんでいるかもしれませんね。でも、いつの世も残っていくのは、世間から必要とされる会社・応援される会社なのかなと私は思っています。信用・信頼を積み重ねていけば、道は自ずと拓けるのではないでしょうか。

私自身も、自社がどうなっていくかは、ずっと不安に思ってきました。自分が理想とする経営が本当に叶うのか、100%は信じきれない自分も居ました。それでも走り続けて、気付いたらここまで来たという感じです。

大切にしてきたのはとにかく、『土台となる』という経営理念、それだけです。これを据えていたからこそ、心が揺れ動く場面でもブレずに判断ができたと思いますし、ブレずに進んできたことで、自分に共感してくれる仲間や支援者の方とも出会えました。

――経営理念を持つことと、そこへ共鳴してくれる仲間との出会いが、今に繋がっていると。悩める皆様に、伊藤社長のお言葉が届いてほしいですね。

「理念採用」という言葉だけを聞くと難しく感じるかもしれませんが、結局は「自分と同じ夢を、必死になって追ってくれる仲間を探す手段の一つ」なんですよね。

会社が今の姿になるまでには、「そんなやり方には付いていけない」と残し、離れていったメンバーもいます。組織のためには必要な決断だったと信じていますが、共に汗を流した人たちとの別れは正直、堪えました。ただ、それでも今いる仲間が手を取り合って、楽しそうに働く姿を見ると幸せに感じますし、これが私の、経営者としての “やりがい” なんだと思います。

伊藤商店は、まだまだ伸びしろだらけ。これからもっともっと、いい会社になっていくと思います。


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