介護業界の人手不足と未来予測、そして打開策とは
本ページでは、介護業界の人手不足の状況を公的調査から概説すると共に、リクルートワークス研究所のレポート『未来予測2040 労働供給制約社会がやってくる』を参照し、介護業界の人手不足から将来起こりうる問題と、その打開策について説明しています。
介護業界の人手不足の現状
厚生労働省によると、第8期介護保険事業計画の介護サービス見込み量等に基づき、都道府県が推計した介護職員の必要数は、2023年度には約233万人、2025年度には約243万人に上るそうです。しかし、2023年 (令和5年) 8月度時点で全国の介護職員数は214.9万人に留まっており、推計による必要数をおよそ18万人下回っています。
人手不足はデータ上だけでなく、介護現場でも実感されています。公益財団法人 介護労働安定センターが令和4年度 (2022年度) におこなった調査によると、人手不足を感じる介護事業所は66.3%に上り、2年連続で前年度の水準を上回っています。
介護業界等の人手不足に関する未来シミュレーション
データ上でも体感としても “人手不足” が明らかな介護業界ですが、将来的にこの傾向はより加速し、社会問題化する可能性があるとの見方を示したレポートがあります。それが、(株)リクルート内の研究機関であるリクルートワークス研究所が発表した、『未来予測2040 労働供給制約社会がやってくる』です。
このレポートは、リクルートワークスがおよそ5年間隔で実施している、はたらくことについての未来予測シミュレーションの内容をまとめたものです。同研究所によれば、日本がほとんど経済成長しなかった場合、2030年には341万人、2040年に1100万人の労働供給不足が生じるとのことです。そして、「生活を維持するために必要な労働力を日本社会は供給できなくなる」ことで、既に需給ギャップが顕在化している、介護・福祉領域を始めとした「生活維持サービス」については、サービス水準の低下を避けられないと伝えています。
サービス水準の低下とは、具体的には、「『週4日必要なデイサービスに、スタッフ不足で3日しか通えない』という状況が“標準的な”状態となってしまう」というようなことを指しています。こうした状況は、単に必要な人が必要な分のサービスを受けられないということに留まらず、受けられない分のサービスを家族などの個人が賄おうとして、その人たちも「仕事どころではなくなっていく」という悪循環を生むとも、同研究所は指摘しています。
介護業界を始めとしたの人手不足の打開策
悲観的な予測の一方、同レポートでは、こうした悪循環を生まないための「4つの解決策」も提示されています。それは、現場を担うスタッフが人でなければできない仕事に集中するという「徹底的な機械化・自動化」、本業以外の人材が一部の業務を担う「ワーキッシュアクト (Workish act)」の導入、細分化した業務を高齢人材に託す「シニアの小さな活動」の活用・評価、そして、労働力を浪費しないための「ムダ業務の改革」です。
こうした解決策の一部は2023年時点で既に芽が出てきており、それを強力に促進すれば、「労働供給制約社会」の発生は2030年から2040年へ遅らせることができると、同研究所は予測しています。そして、この「『10年の猶予』の間に、構造的な解決策を考え実行することだけが、日本が豊かで持続可能な社会を実現するための『細道』であると記しています。
介護業界の人手不足を加速させないために事業者ができること
同レポートの終盤では、労働供給の制約を回避するために、事業者 (企業・雇い主) が今すぐできることについても言及されています。具体的には「機械化・自動化などの省力化に先行投資、開示を促す環境を整える」「柔軟な働き方を認める」「社員の業務外の活動をせめて邪魔しない」「業務のムダを徹底的に排除する」といったものです。
こうした観点は従業員・職員の “働きやすさ” に直結するものであり、次に掲載する求人広告にも活かせる内容です。この機会に改めて、皆様の事業所の求人内容も見直してみてはいかがでしょうか。
介護職ほか、人手不足解消のヒントとなりうるコンテンツ
オンラインセミナー予約受付中!