採用ブランディング実践法│第3回「情報収集」「インタビュー」

採用ブランディング実践法│第3回「情報収集」「インタビュー」

採用ブランディングをテーマにお送りするシリーズ「採用ブランディング実践法」。第3回は採用ブランディングを実践するにあたり、有効な採用ブランド・アイデンティティを掲げるために必要な『情報収集』にフォーカスして解説します。どこから情報を収集し、どんな情報が必要なのかをご紹介していますので参考にしてみてください。

こちらの記事は【明日から使える「採用ブランディング」実践法 採用ブランドを構築する9つのステップ】の内容を抜粋しています。著者が、書籍の内容を惜しみなく公開しておりますので、ぜひご参考にしてください。全文をご覧になりたい方は、【 こちら 】の本よりご覧いただけます。

まずは自社らしさを知ることから

第1回で、採用ブランディングとは、企業の「こう思ってほしい」と、求職者(就活生)の「こう思う」とを近づけていく活動であるとお伝えしました。今回より企業の「こう思ってほしい」を「採用ブランド・アイデンティティ」、求職者(就活生)の「こう思う」を「採用ブランド・イメージ」という用語に置き換えて、お話を進めさせていただきます。

どの企業にも、その企業ならではの魅力=自社らしさが必ず存在します。有効な採用ブランド・アイデンティティを掲げるには、まず自社が何者であるのか、どんな特徴や価値があるのかを知らなければなりません。自社らしさを知るためには、自社に関する情報が必要です。それを集めるのが、ステップ2「情報収集」の目的です。

自社の情報をできるだけ多く収集する

情報は多いほうがいいでしょう。さまざまな角度から立体的に自社を捉えることができるからです。プロジェクトの進行がダラダラとならない程度に、可能な限り多くの情報を収集します。

自社に関する情報はどこにあるでしょうか。もちろん、社内です。たくさんの情報を得るためには社内の協力が欠かせません。社長はもちろん、社歴の長い管理職などから集中的に情報を収集します。しかし、経営層やベテランの意見だけを参考にすると情報が偏ってしまいます。たとえば、入社一年目の新人も貴重な情報源です。ベテランとは違った(新人ならではの)視点で自社のことを捉えています。また、顧客から情報を収集することも非常に効果的です。社外から得られる情報は、自社に関する客観的な情報として大いに価値があります

このように、採用ブランディングを進めるための「情報収集」には、いくつかの方法があります。それぞれの詳細について、以下よりご説明させていただきます。

情報収集法①「経営者インタビュー」

採用ブランディングにおける「情報収集」として、経営者へのインタビューは欠かせません。経営者は会社のトップしか持ちえない情報を所有しています。また、会社に対して強い想いを持っており、それを社員に伝えたい・理解してもらいたいと考えている人も多いです。社員には伝えられないこともあるとは思いますが、価値ある情報を得られることが期待できます。

代表的なインタビュー項目としては、次のようなものがあります。

□ 自社が創業された経緯
□ これまでどんな想いで、何を大切にして経営をしてきたか
□ 自社の経営理念についての考え
□ 自身が考える会社の強み(事業や製品、組織、人材等において他社に勝っている点)
□ 社員に対する想い(社員のことをどのように考えているか)
□ 自社の社員はどうあるべき、どうあってほしいと考えているか
□ 社会における自社の存在意義、存在価値とは何か
□ 自社がお客様に選ばれる(選ばれ続けてきた)理由は何か
□ これまでに(お客様や社会から)会社が得られたこと
□ 経営者として、これまでで最も嬉しかったこと
□ 経営者として、これまでで最も辛かったこと
□ 会社の転機となった出来事と、そのときの想いや決断
□ 社会やお客様に対して自社だからこそ実現・約束できること
□ 現在、会社として課題に感じていること
□ 事業を通して実現したいこと
□ 将来やりたいこと、実現したい未来の姿(3年後、5年後、10年後)
□ 信念、ポリシー、モットー(経営者としてではなく一人の人間として)

経営者インタビューには最低2時間、長ければ3時間以上の時間を要します。それくらい時間をかけないと十分な情報を引き出せません。経営者は忙しいので、なるべく早くスケジュールを調整するほうがいいでしょう。

尚、インタビューで得られた情報は、次のステップ「自社らしさの言語化」で活用します。インタビュー内容は、もれなく文字として記録しておきましょう。インタビュー中にメモをとる方法がスタンダードですが、音声を録音して後から文字に起こすやり方でも構いません。

情報収集法②「キーパーソンインタビュー」

キーパーソンへのインタビューも、採用ブランディングにおける情報収集として有効です。ここで言うキーパーソンとは、部長や課長などの管理職の中でも長年会社に貢献してきた人や、次代を担うような人を指します。

在籍年数の長い人は、古い話から新しい話まで自社に関するさまざまなエピソードを教えてくれるでしょう。次代を担う人は、未来への熱い想いを語ってくれるでしょう。その他、キーパーソンたちは管理職の立場で自社に対する意見を述べてくれるはずです。

代表的なインタビュー項目は次のとおりです。

□ 入社の動機、キッカケ
□ どんな仕事をしているときが一番楽しいか、それはなぜか
□ 入社してから今までで一番印象に残っているエピソード
□ 自身が個人的に思う会社の誇り、自慢は何か
□ お客様からいただいた評価で印象に残っていること
□ 事業優位性、他社に負けない強みは何だと思うか
□ 自社の世の中における価値とは何か
□ 自社の課題、弱みは何だと思うか
□ 自社の事業を通して、社会に何を伝えていきたいか
□ 3年後、5年後、10年後の会社のありたい姿
□ 働く社員にとって自社にはどんな価値があると思うか

インタビューの対象者数は、企業規模や組織体制にもよりますが、最低でも5人、できれば10人前後が理想です。インタビューの所要時間は45分~1時間程度を見ておくといいでしょう。しっかりメモをとることもお忘れなく。

情報収集法③「社内アンケート」

社長に話を聞いた。会長にも話を聞いた。部長や課長にも話を聞いた。よし、これでOK……といきたいところですが、まだ十分ではありません。残りの人たちからも情報を収集すべきです。とはいえ、全社員にインタビューをするのは大変です。そこで、社内アンケートを実施します。

アンケートの項目としては次のようなものが考えられます。参考にしてみてください。

□ 入社動機、キッカケ
□ どんな仕事をしているときが一番楽しいか、それはなぜか
□ 社員にとって、自社にはどんな価値があると思うか
□ お客様が自社を選んでくれる理由(お客様にとっての価値)は何だと思うか
□ その価値を継続するために、または成長・進化させていくために、自社が持っていなければならない力は何だと思うか
□ お客様からいただいた評価で印象に残っていること
□ 事業を通して、社会に何をメッセージし、どんな社会を創っていきたいか
□ 個人的に思う会社の自慢、アピールポイント
□ 求職者の方に「これは伝えておきたい!」と思うこと

社内アンケートには二つの効果が期待できます。一つは、全員から意見を聞くことで情報の偏りを防ぐこと。経営やマネジメントに関わっている人の意見だけでは情報が限定的になってしまいます。

もう一つは社員が、採用ブランディングを「自分ゴト」と捉えやすくなることです。社員が採用ブランドを体現することが採用ブランディングには欠かせません。採用選考のフローにおいては、社員が求職者(就活生)と関わる機会もあるでしょう。そのときに社員が自社の採用ブランドを体現できなければ、採用ブランディングはうまくいきません

にもかかわらず、「(採用ブランド・アイデンティティは)社長や部長がつくったものが現場レベルに下りてきただけ」「プロジェクトチームが勝手に考えたもの」と社員が感じてしまうとどうでしょうか。その社員にとって採用ブランディングは他人事であり、ブランドを体現しようという気持ちにはならないはずです。社内アンケートは、社員たちに参加意識を持たせることができるのです。アンケートの冒頭に「全社員の意見を反映したものにしたいので協力をお願いします」と記載すれば、社員は「自分も参加している」という気持ちになれるでしょう。

アンケートの回収はリリースから2週間ほどが目安です。それ以上長くなると、次のステップへの進行が遅れてしまいます。回収したアンケートはExcelなどで一覧化しておきましょう。後のステップでアンケート結果を確認する際に便利です。

情報収集法④「お客様アンケート」

顧客にも自社に関するアンケートに答えてもらうのが理想的です。採用ブランディングに役立つだけではなく、事業戦略、営業戦略のヒントも得られます。普段から顧客向けにアンケートをとっている企業は、アンケート項目が「会社」にフォーカスしたものであれば、それを活用することもできます(商品やサービスに関するアンケート調査は活用しづらいです)。

アンケートの質問項目として次のような内容を推奨します(B to B、B to Cいずれの場合でも使用いただけます)。

□ 弊社を選ぶ理由を教えてください
□ 弊社を色にたとえると何色だと思いますか? 理由と併せて教えてください
□ 弊社に期待することがあれば教えてください

質問は少ないほうがベターです。質問が多すぎると答えるほうも億劫になってしまいます。また、少ないほうが個々の質問に丁寧に答えてもらえます。

顧客が自社をどう思っているのか知りたいところですが、自社のことを明確な言葉で表現できる顧客は少ないと思います。ただ、言葉にはできなくても、自社に対して何らかのイメージを持っているはずです。「色にたとえると何色だと思いますか? 理由と併せて教えてください」という質問は、そのイメージをなんとかして言葉に置き換えてもらうことを狙ったものです。

回収する数に決まりはありませんが、あまりにも多すぎると進行が滞ります。次のステップでは収集した情報をもとに自社らしさの言語化を行います。情報が多すぎると情報の整理や分析に多大な時間とエネルギーを費やすことになります。回収する数としては50~100が適正だと思います。

このように、さまざまな方法で情報を収集していきます。それをもとに、自社らしさを明確にしていきます。次回、その進め方についてお伝えさせていただきます。

この記事のライター

明日から使える採用ブランディング実践法(著者:毛利大一郎)
明日から使える採用ブランディング実践法(著者:毛利大一郎)

毛利大一郎/株式会社R4  制作部 事業部長 ブランド・マネージャー 
愛知県名古屋市生まれ。早稲田大学 第一文学部卒。クリエイティブ・ディレクターとして、求人広告やパンフレットの他、映像、ウェブサイトから社史、CI/VIにいたるまで、さまざまな企業広告・広報物の企画・制作を手がける。手がけた社数は愛知県・岐阜県の企業を中心に200社を超える。 また、これまでにインタビューをした人数は約2000人に及ぶ。◆その他著書:『仕事にやりがいを感じている人の働き方、考え方、生き方。』(幻冬舎)

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