知らぬ間に法令違反?知っておくべき最低賃金について

「最低賃金」は聞いたことがあっても、具体的にはどのようなものなのか?違反してしまった場合、どうなるのか?等、気になる方も多いのではないでしょうか。今回は最低賃金の基本的なポイントからはじまり、計算方法違反してしまった場合のリスクまで徹底解説していきます。

最低賃金の基本的なポイント

そもそも最低賃金とは?

最低賃金には最低賃金法というものがあり、こちらは使用者が従業員に対して支払う給与の最低額を定めた法律のことで、従業員の安定した生活や、労働力の向上が目的です。

最低賃金が決まっていなければ、会社の裁量によりどれだけでも賃金を下げることができ、労働した分の対価に見合わない額しか支払われないというケースも十分考えられます。それでは従業員の生活は安定しませんし、働くモチベーションも上がりません。そのような状況を防ぐために、最低賃金法は定められています。

※毎年7月~8月頃に最低賃金審議会にて審議・答申が行われたのち、改定額が決定され、10月から新たな最低賃金が適用されています。

最低賃金は2種類ある

最低賃金は、「地域別最低賃金」と、「特定最低賃金」の2種類が存在します。

地域別最低賃金

「地域別最低賃金」は、産業や職種にかかわりなく、各都道府県内の事業場で働く労働者に対して適用される最低賃金です。各都道府県に1つですので、全部で47件の最低賃金が定められています。その都道府県の住居費や食費、自動車の維持費、生活費の平均などをもとに算出されます。

最低賃金引き上げの目安額に関して、47都道府県でA〜D 4つのランクに分けて設定されていましたが、2023年10月以降A~C 3つのランク分けに変更されます。区分を減らして地域間の格差を是正するのが狙いです。

特定最低賃金

一方「特定最低賃金」は、特定の産業について設定されている最低賃金です。令和2023年8月時点では、200件以上の最低賃金が定められており、厚生労働省ホームページからご確認いただけます。 https://www.mhlw.go.jp/www2/topics/seido/kijunkyoku/minimum/minimum-19.htm

※「地域別最低賃金」と「特定最低賃金」の両方が同時に適用される労働者には、高い方の最低賃金額以上の賃金を支払わなければいけません。

最低賃金は基本、全ての労働者に適用

「地域別最低賃金」は、正社員、パートタイマー、アルバイト、嘱託など雇用形態に関係なく、各都道府県内の事業場で働く全ての労働者とその使用者に適用されます。一方、「特定最低賃金」も、18歳未満または65歳以上の方や、一定期間未満の技能習得中の方などを除き、特定の産業に従事する労働者全てに対して適用されます。

最低賃金の計算方法

続いて最低賃金の計算方法について解説します。自社の賃金が最低賃金を下回っているかどうかを確認するには、給与体系ごとに計算する必要があります。

■時給制の場合

時給制の場合は以下の式に当てはめて確認します。

時給≧最低賃金額

■日給制の場合

日給制の場合は以下の式に当てはめて確認します。

日給÷1日の所定労働時間≧最低賃金額

■月給制の場合

月給制の場合は以下の式に当てはめて確認します。

月給÷ひと月の平均所定労働時間≧最低賃金額

最低賃金を違反してしまった場合のリスク

差額の支払い義務

従業員に支払う賃金が最低賃金を下回っていれば、労働基準監督署から是正勧告を受けて、使用者には差額の支払い義務が科せられます。

罰金が科せられる

さらに、労働基準監督署から是正勧告を受けても差額を支払わない場合は、罰則として50万円以下の罰金(地域別最低賃金に違反)または30万円以下の罰金(特定最低賃金に違反)に処されます。

会社のイメージ低下や離職に繋がる

差額の支払いや罰金だけでなく、企業のイメージダウンも避けられません。最低賃金法に違反していることが発覚すれば、取引先に不信感を持たれて、取引を見直される可能性があり、さらに従業員のモチベーションも低下して離職にも繋がってしまいます。 このように最低賃金法を違反することで、企業は大きなダメージを負うこととなるのです。

最低賃金に関してよくある質問(Q&Aで解説)

最低賃金は手当なども含めて計算するのですか?

最低賃金の対象となる賃金は、通常の労働時間に対応する賃金となります。具体的には実際に支払われる賃金から、以下(1)~(5)の賃金を除外したものが最低賃金の対象となります。

(1)結婚祝いなど臨時に支払われる賃金

(2)賞与など1ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金

(3)所定労働時間を超える時間の労働に対して支払われる賃金

(4)所定労働日以外の日の労働に対して支払われる賃金

(5)精皆勤手当、通勤手当など

派遣で働いていて、派遣元と派遣先で都道府県が異なる場合、どちらの最低賃金が適用されますか?

派遣元の事業場の所在地にかかわらず、派遣先の最低賃金が適用されます。

試用期間中でも地域別最低賃金は適用されますか?

原則として適用されます。ただし、精神又は身体の障がいにより著しく労働能力の低い方や、認定職業訓練を受けていて、業務につく時間よりも訓練の時間のほうが大幅に上回るような方などに関しては特例として減額が認められる場合があります。

知っておくべき最低賃金についてのまとめ

最低賃金の大幅な引き上げが続いています。物価高により、今後も最低賃金は上昇していくことでしょう。そのような状況下で「自社が知らぬ間に最低賃金法を違反していた」といった最悪のケースも防ぐために、企業は従業員の賃金を常に把握し、毎年の最低賃金引き上げ前に賃金見直しを徹底していきましょう。

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