採用ブランドアイデンティティの策定・展開│第6回採用ブランディング実践法
採用ブランドアイデンティティとは、採用ターゲットに「こう思ってほしい」と企業が考えることを言葉にしたものです。それは、採用活動における旗印であり、「今回の採用活動はすべてこの考え方に則って進めていこう」という指針となるものです。その策定方法について、お伝えさせていただきます。
この記事の内容は、採用ブランディングの本、【明日から使える「採用ブランディング」実践法 採用ブランドを構築する9つのステップ】の内容を抜粋しています。著者が、書籍の内容を惜しみなく公開しておりますので、ぜひご参考にしてください。全文をご覧になりたい方は、【 こちら 】の本よりご覧いただけます)
採用ブランドアイデンティティは
広告用のキャッチコピーではない
お伝えしたとおり、採用ブランドアイデンティティは採用活動の指針となるものです。したがって、「(誰にとっても)意味がわかりやすい」「社内で共有しやすい」言葉にする必要があります。
凝った表現である必要はありません。採用ブランド・アイデンティティは採用活動の指針となるものであり、広告に用いられるキャッチコピーではありません。「言葉をつくる」となると、多くの人が「うまい表現にしてやろう」と意気込んでしまいます。その表現欲をおさえて、わかりやすく・共有しやすい言葉にまとめることが大切です。
広告用のキャッチコピーが必要な場合は(ほぼ間違いなく必要になりますが)、プロのコピーライターに作成を依頼すべきです。依頼する際は、採用ブランド・アイデンティティの策定後、その意味をできる限り詳細に伝えましょう。腕の良いコピーライターならば、意味を正確に理解して、訴求力のある言葉を生み出してくれるはずです。
採用ブランドアイデンティティの策定法
採用ブランディングにおいて「採用ブランドアイデンティティの策定」は、最も重要なステップと言えますが、作業そのものは難しくありません。それまでのステップで時間と労力を費やしたぶん(ここに至るまで7つのステップを踏みます)、思いのほかスムーズに進みます。
採用ブランド・アイデンティティの策定には、二つの素材を使います。一つは、「スキル」と「マインド」の両面で自社を言語化したもの(第4回「自社らしさの言語化」参照)。もう一つは、端的なフレーズで表したペルソナです(第5回「採用ターゲットの設定」「ペルソナ作成」参照)。この二つを使って、次の項目を順番にまとめていきます。
1.採用ターゲットは誰か
2.採用ターゲットは何を期待しているか
3.自社の特徴、アピールできる強みは何か
4.採用ターゲットに自社だからこそ訴求できることは何か
5.4の内容を簡潔にまとめる
1は、端的なフレーズで表したペルソナがそれにあたります。今さら考える必要はありません。
2は、ペルソナ作成で最後に設定した項目「ペルソナと自社との接点」の内容を要約すればOKです。
3は、自社の「スキル」「マインド」のことです。これも、今さら考える必要はありません。
4は、3の内容のうち1と2に対して訴求できることを整理します。ここは少し頭を使います。
5は、4の内容を簡潔にまとめます。これだけで、採用ブランド・アイデンティティは完成します。簡単です。
採用ブランドアイデンティティの展開を考える
採用ブランドアイデンティティが策定できたら、次はその展開案を考えるステップに移ります。採用ブランディングとは、企業の「こう思ってほしい」と、求職者(採用ターゲット)の「こう思う」とを近づけていく活動です。近づけるためには、企業は採用ターゲットに刺激を与え続ける必要があります(第1回「採用ブランディングとは?」参照)。展開案とは、その刺激の内容を指します。
展開案を考える前にやるべきことがあります。それは、採用ブランドアイデンティティの社内共有です。第1回でお伝えしたとおり、採用ブランディングには「一貫性」が必要です。採用に関わるすべての社員が採用ブランドアイデンティティを体現しなければなりません。「一貫性」を保つためには、社員が共通の認識を持つ必要があります。
社内への共有を終えてから、社外への展開案(採用ターゲットをいかに刺激するか)を考えていきます。必要に応じて、外部の協力会社とも連携しながら、採用フローの設計、求職者とのコミュニケーション方法について企画を練っていきます。その際に必要なのは、すべてを採用ブランドアイデンティティに則って考えることです。
また、注意が必要なのは、採用ブランディング=広告展開・広報戦略ではないということです。広告展開も採用ブランディングを行ううえでは欠かせませんが、採用ブランディングとは採用ブランドアイデンティティと採用ブランド・イメージとを近づけるためのすべての活動を指します。ですから、広告展開に限らず、書類選考や面接といったフローにおいても採用ブランドアイデンティティを活動の指針と置かなくてはなりません。
最後に
以上で、シリーズ「採用ブランディング実践法」は終了となります。要点のみをピックアップした内容なので、足らない点、わかりづらい点があったかもしれません。詳しい内容については、書籍「明日から使える『採用ブランディング』実践法 採用ブランドを構築する9つのステップ」を参考にしていただければと思います。全てのステップの詳細を、具体的な事例を交えながら解説しています。
この記事のライター
毛利大一郎/株式会社R4 制作部 事業部長 ブランド・マネージャー
愛知県名古屋市生まれ。早稲田大学 第一文学部卒。クリエイティブ・ディレクターとして、求人広告やパンフレットの他、映像、ウェブサイトから社史、CI/VIにいたるまで、さまざまな企業広告・広報物の企画・制作を手がける。手がけた社数は愛知県・岐阜県の企業を中心に200社を超える。 また、これまでにインタビューをした人数は約2000人に及ぶ。◆その他著書:『仕事にやりがいを感じている人の働き方、考え方、生き方。』(幻冬舎)
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